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2009年03月06日(金) 06時01分

給付金最速ゲット78歳おばあちゃんが麻生首相、小沢代表に注文スポーツ報知

 マグロとイカと牛肉と—。総額2兆円規模の定額給付金は5日、全国に先駆けて青森県西目屋村と北海道西興部(にしおこっぺ)村で支給が始まった。全国一番乗りで給付金を手にした西目屋村のリンゴ農家・山下好恵さん(78)は「ありがたいことです」と感謝しつつも、麻生首相には消費税増税案の中止を訴え、民主・小沢代表には「政治とカネ」の問題について注文を付けた。

 カラフルな花柄のパーカ姿の山下さんは、定額給付金が入った封筒を大事そうに両手に受け取ると「どうも、すいません」と2度、深々と頭を下げた。すったもんだの末、支給が決まった給付金を全国で初めて手にしたのはリンゴ農家を営むおばあちゃんだった。

 秋田県との県境、世界自然遺産「白神山地」のふもとに位置する人口1592人の西目屋村。この日、148世帯が計697万6000円の支給を受けた。

 住民税の申告のため午前9時半頃から役場を訪れていた山下さんは、約2時間前から給付金支給の窓口に村民約20人と共に並び、正午に「全国最速」の称号をゲット。夫(84)の分と合わせて4万円が入った封筒を関和典村長から受け取った。

 取り囲んだ報道陣の取材に「ありがたいことです。感謝、感激」と手を合わせて拝むポーズで答え「ウチに帰ったら仏壇に上げたい。で、少しずつ食事代に使って、いつもより豪華な刺し身を食べたいです」とホクホク顔。大好きなマグロとイカのお造りを楽しみにしているそうだが「私、ホントはお肉も大好きでねえ。ステーキとかねえ」とテレながら牛肉にも色気を見せた。

 しかし、山下さんの胸中が喜びだけに包まれているわけではない。帰宅し、仏壇に封筒を供えた後、複雑な気持ちも吐露した。「(給付金は)うれしいけれど…。消費税が上がらないか(心配)ねえ。今5%ですけど、麻生さんに10%なんかに上げられちゃうとねえ。農家は厳しい。もう春になるけど、まだ雪はいっぱいですよ」。リンゴと野菜を「ちょっとだけ」生産している山下さんにとって切実な問題に、思わず本音が漏れた。

 政治に期待する思いも強いだけに、民主・小沢代表の公設第1秘書逮捕のニュースには憤りを隠せない。「ホントのこと言うとねえ、政治の人が逮捕されたり、ちょっと(問題だよ)ね。それより、みんなお互いに平和に暮らせるようにしてほしいです。こんな村でもケンカがあるんです」。私利私欲を満たすためではなく、国民一人ひとりのことを考えた政治を—。給付金を受け取った78歳のリアルな願いだった。

(2009年3月6日06時01分  スポーツ報知)

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090306-OHT1T00074.htm