九州大は4日、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)を基にした心臓の細胞だけから、心臓と同様に拍動する立体的な心筋細胞の構造体をつくることに成功したと発表した。これまではシート状のものしかつくれなかった。形も自由にできるため、将来は軟骨や臓器など幅広い再生医療への応用が期待できるとしている。
九州大の中山功一特任助教(整形外科)らのグループが、ばらばらの細胞が約1万個単位に集まった塊を、血液代わりの培養液の中で針や糸に付着させて特定の位置に24−48時間固定、立体的な構造体をつくる技術を新たに開発した。
九州大によると、これまで立体的な構造体をつくるには、別の生体材料との組み合わせが必要だった。細胞のみで立体構造体をつくろうとすると、厚みのために培養液が浸透しなくなり壊死していた。希望通りに形づくれる新技術では、網状や筒状に立体化させて内部にすき間を多数つくることで生存率を高めた。厚さ約1ミリのハート形構造体を培養液内で積み上げると拍動が確認された。
将来は患者自身の細胞だけを使い、移植のための臓器をつくることも理論的には可能という。研究成果は、5日から東京で開かれる日本再生医療学会で発表される。