広島県内で、医療機関が高齢者専用賃貸住宅(高専賃)を開設する動きが本格化してきた。国が進める療養病床の削減の受け皿として、2007年の医療法改正で医療法人による開設も可能となったためで、これまでに広島市と福山市の4法人が事業に乗りだした。県への問い合わせも増えており、さらに動きは広がりそうだ。
広島市安佐北区可部南の医療法人長久堂野村病院は3月16日、病院の敷地内に高専賃を開設する。3階建ての2、3階部分が計48室の賃貸住宅で1階にリハビリスペースもある。病院スタッフがサポートし、介護職員が24時間体制で常駐する。有料老人ホームと同様のサービスを受けられる「適合高専賃」として届け出ている。高専賃は県への登録が始まった05年度は11件だったのが、2月20日現在で50件に増えている。医療法人の参入で、さらに増えていくとみられる。背景には医療費の抑制を目的とした国の療養病床削減政策がある。
療養病床は退院後も長期的な治療が必要な高齢者を受け入れる。国は11年度末までの大幅削減を打ち出している。県も12年度からは約4割減の7568床とする計画だ。しかし、行き場のない高齢患者のためのいわば代替措置として07年5月の医療法改正で、医療法人の高専賃開設が可能になり、生活相談や容体急変に備えての安否確認が義務づけられた。
【写真説明】野村病院が開設する高齢者専用賃貸住宅。病院スタッフがサポートする(広島市安佐北区)