障害者団体の定期刊行物に企業のダイレクトメール(DM)をまぜて送り、多額の発送料を免れていたとされる郵便制度の悪用事件。その陰で、障害者団体が悲鳴を上げている。刊行物の名義人として、郵便事業会社が十六団体に計約四十九億円を請求したからだ。わずかな収入のために誘いに乗ったことを悔やむ一方、郵便事業会社のチェックの甘さを批判する声が出ている。
▽承認
「作業所がなくなってしまったら、わたしたちにとって“死の宣告”です」。大阪府吹田市の知的障害者団体が、郵便事業会社に向けて送る予定の障害者の手記には、悲痛な思いがつづられている。
この団体は、大阪地検特捜部に社長の
▽通知書
その郵便事業会社の代理人弁護士から内容証明が出されたのは昨年暮れ。請求額は「三億三千二百九万六千四百四十四円」。ギフト用のタオルを織り、箱に詰める作業で得られる収入はわずか。「誠意ある回答なき場合は、やむを得ず法的措置をとることになります」と「通知書」は結ばれていた。
手記には「なくなったら生きていけるか不安」「何かあったとき、誰が助けてくれるのか」との言葉が並ぶ。別の女性は「だまされた側が払わなければならないのか理解できない」と憤りをあらわにした。
▽疑問
光沢のある立派な封筒、一色刷りの刊行物に比べ同封のDMは多色刷り、さほど大きくない障害者団体なのに一回に十万通以上も発送。しかも「定期購読者」の大半を占めるのはいくつかの会社だけ—。この不自然さに郵便事業会社は疑問を抱かなかったのか。
郵便事業会社は「制度趣旨を逸脱して利用した者がいたことが原因」と指摘。一方で「当社としても、問題の郵便物が条件をきちんと備えていなかったことを的確に把握できなかった面もあった」とし、問題発覚後、チェック体制を見直し、提出させる資料も増やした。
障害者団体の弁護士は「郵便事業会社が不正を見過ごしたか、もしくは過失か、そういう点があれば団体に責任はない」、別の団体の代表は「これまでは何も言わず、急に金を返せ、というのは許せない。法廷でも断固戦う」と話している。