中小企業の従業員ら約三千六百万人が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率について、今秋から都道府県別に移行する作業が足踏みしている。保険料負担に地域格差が生じることに与党から批判が上がり、厚生労働省が立ち往生しているためだ。
「わざわざ格差をつくって地方を切り捨てるのか」「後期高齢者医療制度の二の舞いになりかねない」。二月下旬の自民党の会合では、出席議員から不満が相次いだ。衆院選を控え、与党には「負担増」へのアレルギーが強いこともある。
協会けんぽは昨年十月、社会保険庁の健康保険部門を引き継いで発足。保険料率は現在8・2%(労使折半)で全国一律だが、一人当たり医療費を反映して地域別に料率を決めることが二〇〇六年成立の医療制度改革関連法に盛り込まれた。地域間で医療費抑制を競わせる狙いだ。
一三年度までの五年間は激変緩和措置が認められているが、厚労省がなかなか政令の内容を固めきれない。都道府県ごとの協会支部は三月末までに料率を定めなければならず、期限は目前だ。
直近の医療費実績に基づけば、本来の保険料率は最高の北海道が8・75%、最低の長野が7・68%となる。両者の格差は1・07ポイントで、保険料負担額(加入者本人分)に換算すると月約千五百円、年間では約一万八千円に相当する。
格差是正のため、厚労省は保険料率の増減幅を本来の「五分の一」とする案を提示。料率は北海道8・31%、長野8・10%となり格差は0・21ポイントに縮小、負担額の差は年約三千五百円に縮まる。
だが自民党の会合では「なぜ格差をつけるのか」との“そもそも論”まで飛び出し、ベテラン議員が「関連法を通した責任はわれわれにある」ととりなす場面も。
協会内も一枚岩ではない。厚労省案は二十三道府県の保険料上昇を圧縮するため、保険料が本来はもっと安くなる二十四都府県の下げ幅を削って回す形。長野などにとっては「医療費を抑制してきた努力が報われない」(同支部関係者)。
一方、面積が広い北海道は札幌など都市部に医療機関が集中、遠隔地在住の患者は入院日数が長くなりがち。医療費がかさむのは構造要因で、「罰則」的な負担増はなじまないとの指摘もある。
与党内では、〇九年度について料率の増減幅を「十分の一」程度にさらに縮めた上で五年かけて段階的に幅を広げ、本来の料率に近づけていく修正案が浮上している。