耳が不自由な人たちの運転免許取得を支援するパソコンソフトを、沖縄県浦添市の県立浦添工業高校(高屋清剛校長、770人)が完成させた。
情報技術科3年生が2006年度に着手し、歴代の3年生に研究をリレー。3年がかりで計17人が携わった。「明快な表現で分かりやすい」と製作に協力した自動車学校も評価している。
開発のきっかけは県立沖縄ろう学校(北中城村)からの要望だった。「毎年2、3人が運転免許を取ろうとするが、苦労している。何か教材ができませんか」。情報技術科は以前、生徒の課題研究で作ったパソコンソフト「手話入り電子紙芝居」をろう学校に寄贈したことがあり、06年3月に相談を受けた当時の教諭が応じた。
06年度は4人、07年度は7人、08年度は6人の生徒が研究に参加。普天間自動車学校(北中城村)から借りた教習用教材を参考にしながら、3年かけて内容を充実させた。生徒は放課後も研究に取り組み、200時間以上を費やした。
完成したソフトは〈1〉画像や手話の動画で自動車の各部位の名称や使い方を解説〈2〉○×式で理解度を確かめる139問のクイズ〈3〉過去に出題された約1000問の学科試験——など6項目で構成。同自動車学校の指導員が監修した。
「視覚に訴える分かりやすさに、生徒はこだわりました」と課題研究を担当する友利悟教諭(26)は話す。項目の中で文章を使う場合は、単刀直入な短い文にするよう心がけたという。今年度制作に取り組んだ生巣宏樹さん(18)も「いかにシンプルに作るかが課題だった。多くの人の役に立つことができればうれしい」と完成を喜ぶ。
ソフトは18日、沖縄ろう学校に寄贈した。来月受け取る予定の普天間自動車学校の玉城徳雄副管理者(45)は「受講者に予備学習の教材として利用してもらえるよう検討したい」と話す。
全日本指定自動車教習所協会連合会(東京)によると、聴覚障害者が自動車教習所に通う場合、一般的に健常者と一緒に講習や実技指導を受け、必要に応じて手話のできるスタッフが個別指導している。「今後、教習所に通う聴覚障害者が増え、講習のあり方にも配慮が求められるようになるだろう。高校生のソフトはいい教材になりそうだ」と同連合会も期待した。(上和田至)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090228-OYT1T00604.htm