吐き出す黒煙や風景が楽しめるガラス張りの展望ラウンジ。木製の壁や革の客席など懐かしさとモダンな装いが同居——。4月25日から熊本県のJR熊本—人吉駅間で復活する蒸気機関車「SL人吉」の客車内が28日、九州鉄道記念館(北九州市門司区)で公開された。
客車は3両編成で定員132人。3号車から1号車へ移るにつれて、客車内の木材や客席の色合いが明るくなる。大正から昭和の移り変わりを表現し、天井には機関車の愛称「ハチロク」にちなみ「86」をかたどった欄間も。2号車のビュッフェでは昔ながらの駅弁も購入できる。3号車には鉄道関係の本を集めた読書スペースも設けた。
日本で初めて本格的に量産された8620型のうち、旧国鉄時代に最後まで営業運転を続けた「58654」号機(1922年製)。1975年の引退後は展示され、88年に「SLあそBOY」として復活した。2005年8月、老朽化で再度引退したが、惜しむ声が数多く寄せられ、JR九州が約4億円かけて修復した。
この日初めてヘッドマークを付けて登場。福岡県行橋市の主婦・日野恵子さん(67)は孫の雅裕君(3)と訪れ、「客車は昔の雰囲気を出しながら洗練された感じでよかった。孫もSLを見て喜んでいたので、ぜひ乗車してみたい」。チームリーダーとして修理に携わった小倉工場総務課長の小田政俊さん(54)は「石炭の燃えるにおいや汽笛など、本物のSLに触れる感動を味わってほしい」と話した。
SL人吉は金、土、日曜を中心に1日1往復運行。運賃は大人片道2570円。(写真・久保敏郎、文・後田ひろえ)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090228-OYT1T00600.htm