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2009年02月28日(土) 14時33分

強姦被告、GPS携帯で居場所通知誓約…情状認め猶予刑に読売新聞

 東京地裁の強姦(ごうかん)致傷事件の公判で、被告の男(26)が「今後、被害者が自分の居場所を特定できるようGPS(全地球測位システム)機能付きの携帯電話を持つ」という異例の誓約書を提出して証拠採用され、執行猶予付きの有罪判決を受けていたことがわかった。

 政府は性犯罪対策として、常習者にGPSの装着を義務付けることを検討課題にあげており、性犯罪被害者の不安や心理面の負担を軽減する対応として注目される。

 男は昨年5月、音楽イベントで知り合った女性(19)を自宅に連れ込み、乱暴しようと顔を床に打ち付けるなどしたとして起訴された。同年12月の初公判では起訴事実を認め、被告人質問で「今後は近づかない」と言明したが、その後の示談交渉で女性から「その言葉を証明するため、居場所を確認できるようにしてほしい」と、GPS機能付き電話の携帯を求められた。

 これを受け、弁護人は最終弁論などで、男が料金を負担して携帯電話会社などの位置情報サービスを利用し、女性が携帯電話やパソコンから居場所を調べられるようにすることを表明。同地裁は今月2日、「身勝手極まりない」としながら、懲役3年、保護観察付き執行猶予5年(求刑・懲役5年)の判決を言い渡し、確定した。

 強姦致傷罪の法定刑は無期または5年以上の懲役だが、戸倉三郎裁判長は「『GPS機器を持ち、被害者に近づかない』という誓約書も提出している」などと執行猶予の理由を述べた。

 

海外ではGPS機器制度化も

 性犯罪対策を巡っては、米フロリダ州などが性犯罪者にGPS付き腕輪を装着させる制度を導入。韓国も昨年9月、前科2犯以上の性犯罪者にGPS内蔵の足輪を最長10年間着ける制度を始め、日本政府も犯罪対策閣僚会議が昨年12月にまとめた行動計画で、GPSの活用を検討課題とした。

 ストーカー問題に詳しい山田秀雄弁護士の話「元被告の行動すべてが監視されることになり、人権面からみると悩ましい。ただ、日本社会が、犯罪者の人権よりも社会防衛を優先する流れになっているのも事実で、有用性をきちんと検証していくことが欠かせない」

 地域の安全対策に取り組んでいる小宮信夫・立正大教授の話「法廷の言葉だけでは信用できない場合があるが、GPSを持てば本人の自制心も高まる。仮釈放の条件として装着させる制度を検討してはどうか」

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090228-OYT1T00526.htm