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2009年02月27日(金) 06時02分

元教育再生メンバー渡辺美樹氏が理事の郁文館中・高校で英検不正スポーツ報知

 東京都文京区の郁文館中・高校で、校長ら数人の教諭が「実用英語技能検定試験」(英検)の問題を事前に開封、試験前日に同校の生徒を集め模範解答を教えていたことが26日、明らかになった。学校側はこの日、理事会を開催。教諭から聞き取り調査を行った結果、試験問題の事前“漏えい”を認めた。同校を経営する学校法人郁文館夢学園は「居酒屋 和民」などの外食チェーンを展開するワタミフードサービス社長の渡辺美樹氏(49)が理事長を務めている。

 複数の学校関係者によると、少なくとも2002年から“漏えい”が継続的に行われていた。英検の試験前日、堀切一徳校長(48)=当時は教諭=らは、実際の問題から抜き出した単語や文法問題を板書し、同校の受験生らに模範解答を示したという。

 その後、学内で問題が発覚。堀切氏らは、漏えいの事実を全面的に認めた。しかし、渡辺理事長は、堀切氏らを処分せず、04年6月には同氏を校長に昇格させている。

 英検では、全国に約400ある「本会場」のほか、2〜5級の受験者が10人以上いれば、学校や塾でも受験できる「準会場」というシステムがある。郁文館では、04年1月の試験を最後に「準会場」にはなっていないという。

 英検側は申し込みのあった教諭あてに、試験実施の2日前までに問題やリスニング用のテープを郵送。事前配布は、配達事故や印刷ミスなどを考慮してのことで、試験実施までの約2日間は、問題の管理を学校側に一任している。

 郁文館側は、この日までに事実関係を一部認めた。堀切校長らの事前漏えいについて「教員としての熱意から」としながらも「教育の世界ではあってはならぬ不正なものであったと認識しております」としている。校長はこの日、辞任を申し出た。

 日本英語検定協会幹部は「教師が問題を事前に教えているという話は、前々から言われてきた話だが、これまで公になったケースはなかった。準会場というシステムは現場の教師を信頼して成り立ってきたシステム。ただ100%不正を防げるか、と言えばそれは難しい」と説明した上で「事実なら、準会場の指定を取り消す、立ち入り調査を行うなどの措置を取りたい」と話した。

 英検によると不自然に合格者が出ているなどのデータをもとに、塾の「準会場」に立ち入り調査を行い、準会場の指定を取り消したことがあったという。

 渡辺理事長は「(不正は)組織的なものではありません。一部の先生の中で実際にそのような事実がありました」とし、今後学内で調査を進める方針を示した。また、27日に、生徒や保護者を集め、この問題について、説明するという。

 ◆渡辺 美樹(わたなべ・みき)1959年10月5日、横浜市生まれ。49歳。明治大学商学部卒。84年、渡美商事、86年、ワタミを設立。2000年3月に東証1部上場。03年4月に「郁文館夢学園」理事長就任。04年「医療法人盈進会」理事(07年に理事長に就任)となる。同年10月には、日本経済団体連合会理事に就任。06年には、内閣官房「教育再生会議」メンバー、現在は神奈川県教育委員。

 ◆郁文館夢学園 1889年、棚橋一郎によって私立郁文館が創立される。夏目漱石の「我輩は猫である」では「落雲館」として登場する。棚橋一族による経営が続くが、経営に行き詰まり、2003年、ワタミフードサービス社長の渡辺美樹氏が理事長に就任。「学校改革」が注目を浴び、メディアにも多数取り上げられる。06年に、学校法人名を郁文館夢学園に変更し、国際高校をグローバル高校と改称。生徒数は中学が708人、高校769人、グローバルが74人(08年度)。OBには、民俗学者の柳田国男ら。

(2009年2月27日06時02分  スポーツ報知)

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090227-OHT1T00073.htm