極東最大の米空軍基地・嘉手納基地(沖縄県)の周辺住民5540人が、米軍機の騒音で被害を受けたとして、夜間・早朝の飛行差し止めと、過去の騒音被害に対する約247億円の損害賠償と将来の賠償を国に求めた「新嘉手納基地爆音訴訟」の控訴審判決が27日、福岡高裁那覇支部であった。
河辺義典裁判長は、1審・那覇地裁沖縄支部判決を変更し、賠償対象区域を1審の「騒音の受忍限度はWECPNL値(うるささ指数)85以上」から「W値75以上」に拡大、過去分の被害について住民5519人に約56億2692万円を支払うよう国に命じた。
賠償総額は、過去約30件の航空機騒音訴訟で最高。「W値75」の一部地域に住む21人は「騒音が低下している」として棄却した。飛行差し止めや将来の賠償請求、騒音と難聴(聴力損失)の因果関係は1審同様に認めなかった。
判決は飛行差し止めについて、1993年に最高裁が横田、厚木両基地訴訟で「米軍機の離着陸には国の支配が及ばない」とした判例を踏襲。その上で、「原告に差し止めの司法的救済の道が閉ざされている以上、国は騒音状況の改善を図る政治的な責務を負っている」と注文を付けた。
1審で賠償対象から外れたW値80、75の区域について控訴審中に現地で測定したデータなどを基に「依然として強い騒音にさらされている」とし、対象を広げた。在日米軍再編に伴い戦闘機の一部訓練が本土移転された点にも言及。「移転は実施されたが、多くの外来機が飛来して騒音被害を及ぼしている」と、再編が負担軽減につながっていない現状を認めた。
2005年の1審判決は、賠償対象を過去の同種訴訟で最も狭い「W値85以上」に限定、3881人に約28億円を支払うよう命じていた。
池宮城紀夫・原告弁護団長の話「飛行差し止めを退けた点で納得いかない。ただ、国の政治的責務に言及しており、裁判所の思い切った政府批判と受け止める。上告するかどうかは今後検討する」
真部朗・沖縄防衛局長の話「飛行差し止めや将来分の損害賠償を認めなかったのは妥当な判断と評価するが、過去分の賠償は十分な理解が得られなかった。判決内容を慎重に検討して対処したい」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090227-OYT1T00641.htm