東証1部上場の精密機器メーカー「オリンパス」(本社・東京)の男性社員が、社内のコンプライアンス(法令順守)通報窓口に上司に関する告発をした結果、配置転換などの制裁を受けたとして、近く東京弁護士会に人権救済を申し立てる。
男性の名前は、通報窓口の責任者から上司に伝えられ、異動後の人事評価は最低水準に据え置かれている。公益通報者保護法では、社内の不正を告発した従業員らに対し会社側が不利益な扱いをすることを禁じているが、男性は「こんな目に遭うなら、誰も怖くて通報できない」と訴えている。
申し立てを行うのは、東京都内に住む浜田正晴さん(48)。
代理人の岡本理香弁護士によると、浜田さんは大手鉄鋼メーカー向けに精密検査システムの販売を担当していた2007年4月、取引先から機密情報を知る社員を引き抜こうとする社内の動きを知った。システムの追加受注を有利に進める目的の工作で、不正競争防止法違反(営業秘密の侵害)の可能性があると判断。最初は上司に懸念を伝えたが、聞き入れられなかったため、同6月、コンプライアンスヘルプライン室に通報した。その後、オリンパスはメーカーに謝罪している。
ところが同室の責任者は、浜田さんとのメールを、当事者である上司や人事部にも送信。約2か月後、浜田さんはその上司の管轄する別セクションに異動を言い渡された。
配属先は畑違いの技術系の職場で、現在まで約1年半、部署外の人間と許可なく連絡を取ることを禁じられ、資料整理しか仕事が与えられない状況に置かれているという。それまで平均以上だった人事評価も、通報後は労働協約上、原則として長期病欠者以外には適用されない評価を受けている。
06年4月に施行された公益通報者保護法に関する内閣府の運用指針では、通報者の秘密保持の徹底を求めており、オリンパスの社内規則でも通報者が特定される情報開示を窓口担当者に禁じている。
浜田さんは昨年2月、オリンパスと上司に対し異動の取り消しなどを求め東京地裁に提訴し、係争中で、窓口の責任者が「機密保持の約束を守らずに、メールを配信してしまいました」と浜田さんに謝罪するメールも証拠として提出されたが、オリンパス広報IR室は「本人の了解を得て上司などにメールした。異動は本人の適性を考えたもので、評価は通報への報復ではない」とコメントしている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090226-OYT1T01229.htm