短時間に潮位が昇降する「副振動」で家屋の浸水被害や船の転覆が起きた九州沿岸では、26日も副振動が観測された。
各地の気象台職員が現地で被害状況を調べ、沿岸で漁業関係者らの警戒が続いた。長崎海洋気象台は、27日も発生する恐れがあるとして、注意を呼びかけている。
同気象台などによると、26日午後9時までに長崎市と鹿児島県枕崎市で80センチ、同県中種子町で57センチの変動があった。被害は報告されていない。
熊本、鹿児島両地方気象台は同日、住宅への浸水や漁船の転覆などの被害があった熊本県天草市と鹿児島県薩摩川内市上甑町にそれぞれ職員を派遣、住民から当時の状況を聞き取るなどした。家屋8棟が浸水した熊本県天草市で調査した熊本地方気象台の福川雅三気象情報官は「10分間隔で海面が大きく上昇し、短時間に約2メートルの潮位変動があったと思われる。副振動での被害は県内では聞いたことがない」と話した。
気象庁によると、日々の潮位の変化を主振動、それ以外の潮位の変化を副振動と呼ぶ。副振動は、港湾や堤防に囲まれた海域で観測され、数分から数十分で海面が大きく昇降する。「あびき」とも呼ばれ、流れが早くて漁網が流される「網引き」に由来するとされる。
今回の大規模な副振動について、津波や高潮に詳しい東京大地震研究所の都司嘉宣・准教授は「何らかの原因で中国大陸で発生した微弱な気圧の波が黄海の波と共鳴し、振動が増幅することがある。これが九州各地の湾内の波と共鳴し振動が大きくなって、潮位を昇降させた可能性が考えられる」と分析している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090227-OYT1T00103.htm