「新嘉手納基地爆音訴訟」の控訴審判決で、米軍機の騒音による被害賠償範囲を1審判決よりも拡大し、国に航空機騒音訴訟で過去最高となる計約56億2000万円の支払いを命じた福岡高裁那覇支部の河辺義典裁判長は27日、「(1審判決の対象外区域も)強い騒音にさらされており、根本的に改善されたとはいえない」と指摘した。
日米両政府に対する飛行差し止め請求は「国に米軍機の飛行を規制する権限はなく、米国には日本の民事裁判権が及ばない」と住民側控訴を棄却したが、基地周辺の騒音について「旧訴訟でも認定されながら、根本的な改善が図られていない。差し止めという司法的救済の道が閉ざされている以上、国にはより一層強い意味で、騒音改善を図る政治的責任がある」と注文を付けた。
判決理由で河辺裁判長は、1審判決が「騒音は減少し、現状ではかなり低い」として請求を棄却したWECPNL(うるささ指数、W値)75と80の区域について「想定されている騒音よりは低いが、準ずるレベルにあり、著しく離れてはいない」と認定。受忍限度は従来の航空機騒音訴訟判決でほぼ定着しているW値75以上とした。
請求が認められたのは2市2町1村の原告住民ら5540人のうち、5519人。W値75区域のうち、同基地から北へ約3・5キロ以上離れた読谷村内の住民21人は実際の騒音測定結果が低いことを理由に賠償の対象から外した。
(共同)