東アジア最大の米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)の周辺住民五千五百四十人が国に損害賠償などを求めた「新嘉手納基地爆音訴訟」の控訴審判決が二十七日、福岡高裁那覇支部であり、航空機騒音訴訟で過去最高となる計約五十六億二千万円の支払いを命じた。
判決理由で
日米両政府に対する飛行差し止め請求は「国に米軍機の飛行を規制する権限はなく、米国には日本の民事裁判権が及ばない」と住民側控訴を棄却したが、基地周辺の騒音について「旧訴訟でも認定されながら、根本的な改善が図られていない。差し止めという司法的救済の道が閉ざされている以上、国にはより一層強い意味で、騒音改善を図る政治的責任がある」と注文を付けた。
原告の99%にあたる五千五百十九人の賠償を認めたが、W値七五区域のうち、同基地から北へ約三・五キロ以上離れた読谷村内の住民二十一人は実際の騒音測定結果が低いことを理由に賠償の対象から外した。
住民側が、沖縄県が一九九九年にまとめた調査や専門家の研究を基に主張していた聴力損失など健康被害との因果関係は「解析結果の信用性に限界がある」と認めず、控訴審結審後の将来分の被害賠償請求は一審判決同様に不適法と退けた。
〇五年二月の一審判決は、W値七五と八〇の区域を「騒音は減少している」と判断。W値八五以上の区域の生活被害だけを認定し、慰謝料など計約二十八億円の支払いを命じた。住民と国の双方が控訴していた。
嘉手納基地は敷地面積約二十平方キロメートルで、約三千七百メートルの滑走路が二本ある。戦時中に旧日本軍が飛行場を建設し、沖縄戦で米軍に接収された。