身近な食材として親しまれているウズラ卵の全国一の生産地に衝撃が走った。27日、愛知県豊橋市の飼育場で感染が確認された鳥インフルエンザ。H7亜型で毒性は弱いとみられ、県や専門家は「人に感染する危険性は低い」などとして、冷静な対応を呼び掛けているが、地元の関係団体では、風評被害を心配する声も出ている。
愛知県豊橋市の飼育場から鳥インフルエンザウイルスが見つかったことで、同市内の同業者にも衝撃が広がった。市内のある業者は「詳しい状況は把握していないが、風評被害が出てこないか心配。行政からどんな指示が出てくるか分からないが、しばらくは様子を見守るしかない」と不安そうに話した。
ざるそばなどで豊橋産のウズラを使う同市内の飲食店は「ニュースで聞いて驚いた」と困惑していた。
一方、愛知県内の養鶏農協でつくる「県畜産養鶏農業協同組合連合会」(名古屋市)は、ウズラ農家は加盟していないものの、各農協に情報をこまめに提供し、注意を促す方針だ。
平野光美参事は「現段階では影響は限定的とみているが、同じ卵ということで、県内のニワトリに関してもイメージが悪化して消費が落ちるなど、風評被害が起きる可能性もある。県は迅速に対応してほしい」と話す。
◆マスク姿で消毒
ウズラへの鳥インフルエンザ感染が発覚した愛知県豊橋市南大清水町の農場では、マスクに白長靴を履いた県職員2人が入り、数棟ある飼育場横にある小屋に慌ただしく出たり入ったりした。その後、県の職員が次々と到着。立ち入り禁止の看板を立てるなど消毒作業を進めた。
この農家は、かつて豊橋養鶉農協の組合長を務めるなど、全国一の生産を誇る豊橋市内の農家の中でも中心的な存在だった。東海農政局によると、この農家は3カ所の飼育場で計41万羽を飼育。1日25万個の卵を生産し、うち18万個は生食用、7万個は水煮などの加工用として出荷されている。
◆ウズラ卵の生産、全国シェア7割
愛知県はウズラ卵の生産で全国の7割近くシェアを占める。その8割を占めるのが豊橋市を中心とする東三河地域。東海農政局などによると、38戸の農家が約400万羽を飼育。全国唯一のウズラ専門の農協もあり、1日約400万個を生産している。豊橋地方で飼われるようになったのは大正10年ごろから。温暖な気候に加え盛んな養鶏のノウハウが生かされ、国内最大の産地に発展。東京・大阪の中間に位置するという立地もあり、全国に出荷されている。
(中日新聞)