「カリスマブーム」で人気に火が付いた美容師とは対照的に、理容師を養成する専門学校の入学者が激減、10年前の約3分の1に落ち込んでいる。
生徒が数人しか集まらず、廃校に追い込まれる学校もある。生き残りをかける各校では、顔そりやメーキャップ、ネイルアートなど、若い男性や女性客向けの技術を取り入れ、生徒獲得に躍起となっている。
熊本市中心部の熊本高等理容学校。実習室で、女生徒をモデルに「エステシェービング」が行われていた。肌の乾燥を防ぐため、顔に蒸気を当てながら化粧を落とし、マッサージ、産毛そり——。教官から「女性の肌は敏感。優しくするように」と指導が飛んだ。
5年前にエステシェービングなどの技術指導を取り入れた同校だが、生徒は通信課を除くと1、2年生合わせて9人だけ。10年ほど前は約40人がいたが、減少の一途をたどる。竹崎一海校長(67)は「昨年度は卒業生8人に約80件の求人があった。不況にも強い職種なんですが……」とため息をもらした。
日本理容美容教育センター(東京)によると、全国の理容専門学校の入学者(通信課を除く)は今年度1162人(定員5066人)。1998年度の2997人に比べて6割減った。学校は理容店の組合などが運営しており、沖縄県では県内唯一の理容学校が生徒減少で経営難となり、2010年秋の廃校が決まった。大分、宮崎市でも生徒が数人しか集まらないケースがあるなど、各校とも苦戦を強いられている。
全国理容生活衛生同業組合連合会の大森利夫会長(61)は「いつの間にか華やかさを失い、古くさいイメージが定着してしまった」と嘆く。
理容業界では後継者難への心配を強めている。連合会は昨年、後継者育成のための補助金計1000万円を全国の組合に交付するとともに高校などでカットの実演などを行い、“格好いい理容師”をアピールする活動を強化。各校は、頭の皮脂を洗い流すヘッドスパ(福岡市)や、女性の爪を装飾するネイルアート(宮崎市)など、若者や女性を意識した技術を取り入れている。
連合会は新年度、加齢臭を抑えるエステのキャンペーンを新たに始める予定で、専門学校でも技術指導を行うことを検討している。大森会長は「お客だけではなく、理容師を目指す若者を増やすためにも、流行を発信する技術を業界全体で磨きたい」と話している。(門岡裕介)
理容師 理容師法で「頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えること」と定め、顔そりが認められている。これに対し、美容師法は「美容とはパーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」と規定、原則として顔そりは認められていない。
いずれも国家試験があり、厚生労働省によると、養成施設は理容師が102校、美容師が259校。2007年末現在、全国の理容師は24万6000人、美容師は43万4000人。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090226-OYT1T00665.htm