東京・新宿歌舞伎町で今月21日、酒を大量に飲まされてキャッシュカードを奪われた男性が死亡した事件に絡み、昨年秋以降、歌舞伎町周辺で、泥酔したスナックの客がキャッシュカードを抜き取られ、現金を引き出される被害が約30件に上り、被害総額は4000万円を超えていることがわかった。
死亡した男性が酒を飲まされたスナックなど少なくとも5店舗が「客を酔わせてカードの暗証番号を調べる店」「カードを抜き取る店」という役割分担をしており、警視庁は、組織的な昏睡(こんすい)強盗事件とみて調べている。
21日早朝に路上で倒れているのが発見され、死亡した練馬区の会社員の男性(50)は、歌舞伎町のスナック「美松」で、ウオツカ入りの焼酎などを大量に飲まされた後、キャッシュカードを抜き取られていた。
同庁は、昏睡強盗容疑で同店店主の小川美津子容疑者(73)らを逮捕して捜査を進めた結果、男性は同店で飲酒中、店員とみられる女2人に付き添われ、近くのコンビニエンスストアの現金自動預け払い機(ATM)で現金を引き出していたことが判明した。女たちはこの際、キャッシュカードの暗証番号を盗み見て、その後、カードを抜き取って現金を引き出したとみられる。
同庁幹部によると、歌舞伎町では昨秋から、同じ手口の昏睡強盗が相次ぎ、被害者のほとんどが、「美松」など歌舞伎町中心部にあるスナック4店の客だった。
被害者は深夜から未明に1人で歩いているところを若い女に声をかけられ、店で大量の酒を飲まされて高額な代金を請求され、クレジットカードでの支払いを勧められていた。被害者が拒むと、店員がコンビニに付き添ってキャッシュカードで現金を引き出させ、その後、近くの雑居ビル内にある二次会用のバーに連れ込まれていた。
このバーでも被害者は口移しなどで酒を飲まされ、泥酔して意識を失った後、キャッシュカードを抜き取られていた。店側は抜き取ったカードで現金を引き出し、発覚を遅らせるため、財布にカードと少額の現金を入れて被害者をタクシーに乗せて帰宅させたケースもあった。
同庁では、これら約30件の被害について、組織的な犯行との見方を強め、先月には、二次会用のバーの出し子の男1人を窃盗容疑で逮捕。今月に入っても、二次会用のバーで「ママ」と呼ばれていた女や店長の男ら数人を、昨年12月に男性客から数十万円を奪った昏睡強盗容疑で逮捕した。同庁は、奪った金の流れについても全容解明を進めている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090226-OYT1T00618.htm