24日深夜から25日朝にかけ、九州北部から鹿児島県奄美地方にかけての沿岸部で、短時間に海水の上下変動が起こる「副振動」が観測された。
長崎海洋気象台などによると、熊本県天草市で1メートル97、長崎港(長崎市)で約1メートル60、枕崎港(鹿児島県枕崎市)で約1メートル40の潮位の振幅を観測。天草市で8棟が床上床下浸水し、鹿児島県内で係留中の漁船など30隻が沈没、転覆するなどの被害が出た。
同気象台によると、副振動は「あびき」とも呼ばれ、気圧や風の急激な変化が引き起こすと考えられている。気圧が高いと海面が下がり、低いと上がることなどから、海水に振動が発生。さらに、海底のでこぼこな地形の影響を受けて振動が増幅し、入り江のような狭い場所に入ると振幅が大きくなる。長崎港では1979年3月31日には2メートル78の振幅を記録している。
今回は、東シナ海で気圧の急激な変化が起きたためとみられ、ほかに、熊野漁港(鹿児島県中種子町)で約90センチ、油津港(宮崎県日南市)で約70センチを観測した。
副振動の影響で、熊本県天草市河浦町の崎津地区では、床上1棟、床下7棟の浸水被害が出た。市によると、25日午前8時半頃から約30分にわたって潮位が大きく上下し、海水が道路などにあふれ、住宅にも流れ込んだ。鹿児島県内では、薩摩川内市・甑(こしき)島や南さつま市などで係留中の小型船、漁船の転覆・沈没が相次いだ。さらに同島では住宅や海岸部の道路などにも浸水被害が出たという。
薩摩川内市上甑支所(甑島)の馬場正弘・市民福祉課長(54)が同日午前9時前に浦内港に行くと、漁船数隻が転覆し、周辺の道路には木くずなどが散乱していた。馬場課長は「島に長年住んでいるが、住宅地にまで海水が押し寄せたことはこれまで記憶にない。台風なら襲来前に備えができるが、副振動はいつ起こるか分からず、本当に怖い」と話していた。
また、大気が不安定になっていた影響で、鹿児島県指宿市では同日午前0〜1時にヒョウと突風に見舞われ、収穫前の特産のソラマメなどに約3億2500万円の農業被害が出た。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090226-OYT1T00146.htm