2002年7月の台風により河川からの越流で浸水被害にあった岐阜県大垣市荒崎地区の住民183人が、河川管理者の同県を相手に約8200万円の慰謝料を求めた訴訟の判決が26日、岐阜地裁であった。野村高弘裁判長は「県の河川管理に瑕疵(かし)は認められない」として訴えを棄却した。河川水害訴訟は1984年の大阪・大東水害訴訟の最高裁判決以降、ほとんど住民敗訴となっており、昨年の東海豪雨新川訴訟に続く敗訴となった。
最大の争点は大垣市内を流れる大谷川右岸で長さ110メートルにわたり堤防が約1メートル低い「洗堰(あらいぜき)」の位置づけ。増水時にここから水を流し河川のはんらんを防ぐ働きがあるとされる。
原告は「洗堰がありながら遊水池などの対策がない」「洗堰から越流し繰り返し浸水被害を受けたのは県の責任」と主張していた。
これに対し、岐阜県は洗堰は改修途中で「洪水防止が目的」とした上、かさ上げ工事をして2年に一度だった大谷川の洪水頻度は5年に一度となり「ほかの河川と比べて遅れてない」としていた。
野村裁判長は「越流堤としての機能があり一帯は事実上の遊水地」としながらも「洗堰の締め切りを計画中で、その期間を要するのはやむを得ない」と県の責任は否定した。
河川管理における行政側の責任は、判例で「改修中の堤防は著しく対策が遅れていなければいい」とされる。新川訴訟でも、名古屋地裁は洗堰を問題視しながら改修計画中として住民側の訴えを棄却した。
<荒崎水害> 岐阜県大垣市荒崎地区などで2002年7月10日から11日にかけ、台風6号で揖斐川支流の大谷川の洗堰(あらいぜき)から越流。309戸が床上浸水、173戸が床下浸水した。
(中日新聞)