靖国神社に「英霊」として祭られ続けているのは苦痛だとして、元軍人・軍属11人の遺族9人が、神社に合祀の名簿から削除するよう求めた訴訟の判決で、大阪地裁(村岡寛裁判長)は26日、請求を棄却した。遺族は併せて神社と国に1人当たり100万円、計900万円の慰謝料も求めていたが、判決は退けた。
神社を被告とし、遺族の意に反した合祀の是非に対する司法判断は初。同様の訴訟は東京、那覇両地裁でも争われている。遺族は控訴の方針。
判決理由で村岡裁判長は、「故人を敬愛追慕する人格権」が侵害されているとの遺族の主張について、「合祀という宗教的行為による不快の心情か、神社への嫌悪の感情としか評価できない」と指摘。
殉職した自衛官の遺族が国などに起こした「自衛官合祀拒否訴訟」の最高裁判決(1988年)を引き、「合祀は神社の信教の自由に基づき自由にできる。強制や不利益の付与もなく、遺族が主張する人格権は法的に保護すべき利益とは認められない」と結論づけた。
国は80年代まで、氏名や所属を記した「祭神名票」(戦没者調査票)を神社に提供し、合祀名簿に当たる祭神簿や霊璽簿づくりに協力。遺族側は国の責任も問うたが、判決は「重要な役割は果たしていたが、神社のためだけに戦没者情報を集めていたわけではない。合祀は神社が最終的に決定しており、国に事実上強制したとみられる影響力はなかった」と退けた。