福岡大病院救命救急センター(福岡市)は25日、呼吸不全で入院した60代の男性患者について、回復の見込みがなく死期が差し迫った時点で家族の希望を受け、人工心肺装置を止めて延命治療を中止したケースが昨年あったことを明らかにした。男性は家族立ち会いの下、13分後に死亡が確認された。
医療チームによる対応など延命治療の中止手続きを明記した日本救急医学会の終末期医療に関するガイドライン(指針)を適用した。2007年10月に策定された同指針に基づき、患者の生命に直結する治療の中止が明らかになったのは初めて。生命の切り捨てとの批判もある「尊厳死」論議に一石を投じそうだ。
同センターによると、男性は昨年、肺炎による急性呼吸不全で入院。搬送時に意識はなく、人工呼吸器だけでは対応できない重い低酸素状態だったため、呼吸器に加え人工心肺装置を付けた。
いったん容体は落ち着いたが数日後に再び呼吸状態が悪化、多臓器不全となり血圧の維持も厳しい状況が続いた。
入院から約3週間後、男性の家族は、男性が以前「無理な延命はしないで」と話していたことから治療中止を希望。
この時点で、医療チームは男性の余命が長くても数日、場合によっては1日以内とみていた。
センター長や医師、看護師らで対応を検討し、指針に照らし延命治療を中止しても問題ないと判断。家族全員に説明した上で同意書を取得し、人工心肺装置を停止させた。
(共同)