【ワシントン25日共同】オバマ米大統領の二十四日の施政方針演説は、経済を中心とする内政問題に大半が費やされ、ブッシュ前大統領の一般教書演説とは著しい対照をなした。昨年一月の一般教書演説で二十三回使われた「テロ(テロリストも含む)」という言葉は今回、わずか三回しか使われず、米国が確実に「ポスト9・11(中枢同時テロ)の時代」に入ったことを示した。
オバマ大統領は9・11後の「困難で不透明な時代」から抜けだし、米国再生への「新たな礎」を築くため、エネルギーと医療、教育に重点投資する方針を表明した。
しかし、連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は米上院で二十四日、景気の完全回復には二—三年かかるとの見通しに言及。その場合は一段と税収が落ち込み、金融安定化のための新たな公的資金投入や追加景気対策も見込まれることから、史上最大の一兆三千億ドル規模の財政赤字が増大する恐れがさらに高まる。
オバマ大統領はこのため、核兵器など「使われていない冷戦時代の兵器体系」を見直すほか、イラク戦費も無駄を省き、四年間で赤字を半減する方針を表明した。しかし公約通りイラクから米戦闘部隊を引き揚げても、対テロ戦争の「主戦場」と位置付けるアフガニスタンには軍を増派するため、財政健全化がどこまで進むかは不透明だ。
また重点投資の対象となるエネルギー、医療、教育は与野党対立が激しい分野。大統領を支える与党民主党が大規模公共投資を盛り込んだ法案の成立を目指しても、「小さな政府」を志向する野党共和党の抵抗が見込まれ、構想実現は容易ではない。
オバマ大統領は今回の演説で「希望を持てるようなことを言ってほしい」(クリントン元大統領)という声に配慮。しばしば口にした「国家的破局」などのどぎつい表現は控え、大統領選中に繰り返した「イエス・ウィー・キャン(わたしたちはできる)」のような前向きの展望を示した。
だが、大統領のすぐ後に演説した共和党のホープ、インド系のジンダル・ルイジアナ州知事は「希望のメッセージは評価するが、民間活力を増し、歳出を抑えることが国家再建につながるのであり、政府への依存拡大は国のためにならない」と反論した。