終末期患者の延命医療について、患者と医師が十分に話し合っていないと考える人が53%に上ることが二十四日、厚生労働省の調査で明らかになった。自分の延命医療について家族と十分に話し合っている人は5%。同省は延命医療をめぐる国民的合意ができていないとして、今夏までにまとめる報告書に具体的な延命医療の中止基準を盛り込まない方針を固めた。
同省は昨年三月、国民(二十歳以上の男女)五千人、医師や看護師ら九千人を対象に終末期医療に関する調査を実施。同日の専門家会合で、調査結果の解析を公表した。
延命医療を続けるかについて、医師と患者の間で十分に話し合われていないと答えたのは、国民51%、医師59%、看護師54%。
将来の自分の延命医療について、家族と十分話し合っていると答えたのは国民4・3%、医師7・3%、看護師6・1%だった。
同省は「国民的な議論が進んでおらず、延命医療の中止について法制化したり、具体的な基準を策定する段階にない」と結論づけた。
その一方で、自分が余命六カ月以内の末期で回復の見込みがない場合、延命医療を望まない人が八割近くに上った。医師が患者の意思に基づいて延命医療を中止すれば、刑事訴追される可能性があり、医療者の四割近くが「詳細な基準を作るべきである」と答えた。
同省は二○○七年、終末期医療をめぐる初の指針を策定したが、延命治療の中止基準を盛り込まず、医療現場から不満が出ている。
◆医療現場は不満
<解説> 厚生労働省が延命医療の中止基準を策定しない方針を固めたことについて、ある公立病院長は「国が基準を作らないなら、チーム医療を徹底するしかない」と指摘する。
チーム医療なら主治医の独断を避け、警察の捜査が入ったとしても客観的に治療を中止した理由を説明できるからだ。
ただ、チーム医療は治療方針について医師や看護師が何度も話し合うため、時間がかかる。医師不足のために進んでいないのが現状で、今回の調査でも医療者の約50%が行われていないと答えた。
「国から理念だけ押しつけられてもかなわない」というのが医療現場の本音だ。そうした思いをどう報告書に反映させるのか。同省に突きつけられた課題といえる。 (中部報道部・城島建治)
(東京新聞)