政府の景気対策で打ち出された本州四国連絡橋の料金大幅割引が、競合するフェリー各社を直撃しそうだ。今春から2年間の時限措置ながら土日祝日・上限1000円の通行料金が相手では、太刀打ちは困難。割引には本年度第2次補正予算から5000億円が投入されるが、フェリー業界にとっては「不景気加速策」と関係者から不満が噴き出している。
「昨夏の燃油代高騰で体力が消耗したところに通行料金の値下げ。とどめを刺された気分だ」。呉・松山フェリー(呉市)の森正樹常務(61)は険しい表情で嘆いた。
尾道市と愛媛県今治市を結ぶ瀬戸内しまなみ海道は、乗用車の通行料が片道4700円。これに対し同社の呉(阿賀港)—松山(堀江港)間は、運転手運賃込みで9000円。2倍近い金額ではあるものの、船内で休憩できるメリットが支持されてきた。
だが、通行料が1000円まで安くなると利用者の判断も変わりそう。出張帰りに阿賀港で乗船待ちしていた高松市の会社員池内幸裕さん(57)は「体力的にきつくても絶対に橋を選ぶ」と言い切る。
竹原波方間自動車航送船組合(竹原市)が運航する中・四国フェリー。唯一の航路である竹原(竹原港)—今治(波方港)間は、4月末で廃止される方針になった。しまなみ海道開通後、利用者の減少にあえいでいたが、通行料の割引が早期廃止への決断を促した。
広島、呉と松山を結ぶ瀬戸内海汽船(広島市南区)は7日から、土日祝日の値下げに踏み切った。乗用車でフェリーを利用した場合、広島港—松山観光港間1万1700円だったのを8000円にした。
同社によると、この年末年始、乗用車の利用が前年比で2割以上減った。一方、しまなみ海道は昨年9月から自動料金収受システム(ETC)搭載車の休日料金が半額になったこともあり、約15%増。広島県旅客船協会会長でもある瀬戸内海汽船の仁田一郎社長(47)は「1000円になればさらに2割減る」と危機感をあらわにする。
【写真説明】松山行きフェリーに乗り込むトラック。本四連絡橋の通行料が大幅割引されれば、利用減は必至だ(呉市の阿賀港)