地元直売所での販売がほとんどだった秋田県横手市山内地区特産の「いぶりがっこ」を全国に売り出す動きが加速している。
地区内の農家が統一レシピで漬けた「金樽(きんだる)」が今月から首都圏の高級スーパーに初めて出荷されたほか、東京の食品企画・販売会社が今春にも全国販売しようと、農家と交渉を進めている。自然由来の素材を使った手作りの伝統食が注目を集めている。
横手市マーケティング推進課は、各生産農家でバラバラだったいぶりがっこの統一レシピを作ろうと、2007年から味や香りを競う「いぶりんピック」を開催。08年には、優勝者のレシピを元に漬けたいぶりがっこを「金樽」のブランドで600本を県内に出荷し、完売。商品には各農家の名前と樽番号を付けた。
今年の金樽作りには26人の農家が参加し、5000本を生産。このうち3000本は、首都圏を中心に展開している高級スーパー「成城石井」(本社・横浜市)から予約が入り、今月中旬から店頭に並んでいる。
こうした市の取り組みを聞きつけ、無添加や有機農法にこだわった各地の伝統食品を自社商品として企画・販売している「IRits(アイリッツ)」(東京都渋谷区)が動き出した。
同社の松本多美枝社長は、市マーケティング推進課から紹介を受けて今月、横手市山内三又の農業高橋篤子さん(57)の家を訪問。高橋さんが今冬に漬けた、いぶりがっこを春先から販売しようと、値段などについて具体的な話し合いを進めている。全国をターゲットに、首都圏の店舗での店頭販売や通信販売で売り出す計画だ。
松本社長は、高橋さんの自宅裏の雪に覆われた畑やダイコンを洗っているわき水のため池などを見て回り、デジタルカメラで撮影した。
県内では、着色料で黄色く色付けたいぶりがっこが広く好まれているが、松本社長は、自然素材のみを使い、手作りした山内地区産のいぶりがっこを売り出したい考えで、「首都圏では色は気にしない。それよりも、『有機・自然・無添加』へのこだわりが求められている」と話している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090224-OYT1T00070.htm