墨田区の有志が、1992年に始めた外国人講師による「世界の家庭料理講習会」が、先月で100回目を迎えた。これまでに登場した講師は、65か国・地域の75人。「人類共通の『食』を通して、身近な外国人と楽しく交流しよう」を合言葉に、3月1日には墨田区家庭センター(亀沢3)で101回目の会を開く。
このグループは「すみだインターナショナル」。スタッフは7人で、代表の荒川春子さん(58)は学習塾経営の傍ら、企画してきた。
92年に知り合ったスリランカ人から、「私たちは1日3食カレー。日本のとは味が違う」と聞いて、「食べてみたい」と思ったのがきっかけ。講師を頼み、夫や友人らと教室を開くと好評で、以来、年6回のペースで開講。毎回各国の家庭料理3品を調理している。
口コミなどで広がり、会員は1都3県の小学生から80歳代まで71人になった。会員の3割は男性だ。
荒川さんはレシピの裏に、毎回、講師の母国の地図や歴史、文化などの解説を入れて、食後に本人から祖国を紹介してもらう。
印象的だったのは、86年のチェルノブイリ原発事故で大きな被害を受けたベラルーシ出身の女性の話。事故発生から約10年後で、報道も減っていたが、なお多くの親類や友人が闘病生活を送っている、と悲痛な表情で語ったという。
都内の外国人登録者は、92年の約26万人から今年で40万人に増えている。講師を2回務めた台東区の主婦、国分ロサさん(ホンジュラス)は「料理の感想を聞くのが楽しい。家ではめったに作れないから、自分もうれしい」と声を弾ませた。
会員の小林由紀子さん(68)は「初めて見るメニューに驚きで、家で作ると食卓が盛り上がる」と喜ぶ。荒川さんの高校時代の恩師、増田幹夫さん(77)も数年前の同窓会以来、参加している。「料理は誰をも和ませる。この年にして新鮮な気持ちです」と話す。
家庭の事情で海外に行けない人には「地元で異文化が楽しめる」と人気。国際ニュースを見るようになった小学生もいるという。
荒川さんは「今思えば、東京オリンピック前に若者が結成した『国際交流クラブ』で、お互いの国のメニューを作った楽しい思い出が原点かも」と語る。
難しいのは講師探し。「メディアや知人の情報を頼りに17年、東奔西走した。時には街で声をかけるナンパまがいも」と笑う。
100回を記念して、会費の残金10万円を、国連食糧農業機関に寄付した。「たくさんの笑顔に出会えるからやめられません。100か国を目指します」と新たな目標を掲げている。
同会は年会費、参加費各1500円(非会員は参加費のみ2100円)。問い合わせは荒川さん(電)3622・1048へ。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20090224-OYT8T00087.htm