米アカデミー賞で外国語映画賞に輝いた「おくりびと」が描いた「納棺師」という仕事。主演した本木雅弘さんの技術指導に協力した札幌市の株式会社「札幌納棺協会」は、1954年に1400人以上が犠牲になった青函連絡船洞爺丸などの海難事故をきっかけに始めたという。
洞爺丸事故では、被害者が多すぎて葬儀社だけでは手が足りず、当時北海道函館市に住んでいた遠山厚さん(故人)が遺族への引き渡しを手伝った。遠山さんは、遺体を丁寧にふき清めることで遺族のつらさが和らぐ場面を見て、69年に札幌市で納棺協会を設立したという。
現在は納棺の技術や様式も複雑化。遺体に化粧をする際は仕上げを遺族に手伝ってもらうなど、儀式としての側面も強くなっており、同社では納棺師になるためには社内試験に合格しなければならない。
同社の納棺師、堀江満さん(39)は「裏方だが、高いプロ意識を持ってやる仕事。受賞により、良いイメージで世間に知ってもらえた」と話している。