米国各地で原爆展を開催している広島平和文化センター(広島市)は24日、インターネットを使ったテレビ会議方式で広島とインディアナ州インディアナポリスの大学を初めて結び、被爆者の寺本貴司さん(74)=広島県廿日市市=が「われわれ被爆者は(時がたてば)いなくなる。未来の核廃絶を若い人たちに託したい」と訴えた。
10歳だった寺本さんは、爆心地から約1キロの自宅で被爆し、生き別れた母親を9日後に亡くした体験を、英語の通訳を交え証言。学生ら参加者からは「核兵器廃絶に誰が責任を持つべきか」「その日のことを話すのは恐ろしいか」など質問が相次いだ。
2007年9月に始まり、これまで45州107都市で実施された全米原爆展。「被爆者の生の声を聞きたい」との要望で、これまで寺本さんら10人が渡米し、約50都市で証言してきた。
だが平均年齢75歳を超えた被爆者に、飛行機での長時間の移動は肉体的負担が大きく、帰国後体調を崩したり、証言活動を一時休んだりする人もいたという。
証言を終えた寺本さんは「居ながらにして世界中に平和の大切さを伝えられた」と満足そう。同センターのスティーブン・リーパー理事長も「被爆者の体のストレスを考えるといい方法だ。欧州や南米でもやっていきたい」と述べた。