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2009年02月24日(火) 20時57分

奈良放火殺人の供述調書漏えい、精神科医に6月求刑読売新聞

 奈良県田原本町の放火殺人事件で、中等少年院送致となった少年(18)の精神鑑定用の供述調書などを漏えいしたとして、刑法の秘密漏示罪に問われた精神科医崎浜盛三被告(51)の論告求刑公判が24日、奈良地裁(石川恭司裁判長)であった。

 検察側は「少年審判の非公開を定めた少年法の精神を根底から破壊した」などとして、崎浜被告に懲役6月を求刑した。弁護側は最終弁論で、「鑑定人の診断や、検査の指示は治療を前提としておらず、同罪が適用される医師の業務にはあたらない」などと無罪を主張し、結審した。

 検察側は論告で、崎浜被告が、奈良家裁から受け取った供述調書などの鑑定資料をフリージャーナリスト草薙厚子さん(44)に見せたことについて、「少年や父親から了解を得ることが可能だったにもかかわらず、承諾も受けていない」とし、「自ら立ち会うこともなく、見せるものも限定しておらず、少年やその家族のプライバシーに何ら配慮していない」と指摘した。

 弁護側の「被告は医師として鑑定したのではない」とする主張には、「今回の精神鑑定業務は、被告が医師として行った業務であることは明白」とした。

 弁護側は、最終弁論で「今回の事件は、情報源を圧殺し、報道機関への取材協力行為を制限するもの」と主張。草薙さんと、本を出版した講談社にも言及し、「公権力の介入をもたらした社会的責任を深く認識し、その責任を果たすべきだ」と訴えた。

 公判後の記者会見で崎浜被告は、「求刑は予想通りで驚きはない。検察側とは価値観が全く違っている」と話した。草薙さんは弁護士を通じて、「無罪判決が下ることを強く確信しています」とのコメントを発表。講談社も「崎浜医師の正当性は十分立証された。良識ある判断が下されるものと確信している」とコメントした。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090224-OYT1T00736.htm