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2009年02月23日(月) 05時05分

アナゴ激減・クロマグロ毎年回遊…大阪湾温暖化異聞読売新聞

大阪府泉南市の岡田浦漁港に水揚げされたアナゴ。「今年の漁獲は例年の10分の1」という=大久保忠司撮影

 大阪湾周辺の漁業に異変が起きている。地球温暖化による水温の上昇が影響しているとみられ、アナゴが減り続ける一方、黒潮に乗って外海を回遊するクロマグロが毎年取れるようになった。

 かつては見られなかった南方系の生物も多く確認されているという。調査している大阪府環境農林水産総合研究所は「湾内の生態系への影響や漁獲の減少が心配」としている。

 同研究所は、同湾内の20か所の水温を定期観測。1978年からの10年間と、98年からの10年間の湾内の月ごとの表層水温の平均値を比較したところ、最も差があった11月は1・18度上がり、最も差が少なかった9月でも0・13度上昇していた。1度の上昇は、この海域が温かい九州側に300〜500キロ移動したことに相当するという。

 水温の変化に伴うように取れなくなったのがアナゴ。兵庫県の年間漁獲量は、ピークだった88年には2411トンだったが、2006年には614トンに減少。大阪府でも88年は606トンあったが、06年は175トンに落ち込み、両府県合わせた漁獲量は約4分の1にまで減っている。

 アナゴは台湾近海で産卵、稚魚が冬季に日本列島に向かって北上するが、同研究所は、水温上昇で接岸海域が、東北などに移ったのではないかと分析している。

 漁獲減の影響は料理店を直撃。「本焼あなご下村明石店」(兵庫県明石市)では、約10年前からホームページで仕入れ先業者を募集する広告を出しているという。永峰和恵総務(33)は「仕入れ先の取り合いになっている」と話す。

 また、冬に産卵するマコガレイやイシガレイなども95年頃から減り始めた。水温変化の影響を受けやすいメスの成熟期が本来の1月上旬から遅れ、オスの成熟期とずれが生じているためとみられる。大阪湾内のカレイの漁獲量は05年に582トンで、10年前の半分にまで減少した。

 逆に、取れるようになったのが、湾内まで入って来ることがほとんどなかったクロマグロ。96年に初めて取れ、03年以降は毎年漁獲がある。05年には同府岬町で定置網に40〜50キロクラスが10本かかった。水面をはねる姿も見かけるようになったといい、堺市の船宿「シーマジカル」の嶌原正浩社長(35)は「最近はルアーで狙う釣り客もいる」と話す。

 また、熱帯の海にいるモンツキイシガニやアミメノコギリガザミといったワタリガニの仲間も、水温が高い状態が続いた90年代後半〜2000年代前半まで多く取れた。このほか、暖水に生息するシャコやウニも相次いで見つかっている。

 同研究所の鍋島靖信主任研究員(55)は「本来、南方系の生物は、海流に乗って北の方まで来ても、冬に死んでしまう。大阪湾の水温が上がり、越冬して繁殖できる環境になってきているのではないか。他の都道府県とも情報交換して広域的な異変を把握し、漁業対策を立てたい」としている。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090223-OYT1T00100.htm