民族対立による内戦で荒廃したスリランカ東部の復興を担う現地の行政官やジャーナリスト計9人が22日、広島市中区の平和記念公園を訪れた。被爆者の証言や原爆資料館の見学を通して惨禍から立ち上がった広島の歩みをたどり、母国復興の思いを強めた。
メンバーは、民族や宗教が異なる20—40歳代の男女。外務省の招聘(しょうへい)事業で17日から来日し、広島訪問を「日本の復興の象徴を肌で感じたい」と強く要望していた。被爆者を囲む会では、爆心1.5キロの平塚町(中区)で建物疎開中に被爆した阿部静子さん(82)=海田町=が戦後にケロイドで苦しんだ体験などに耳を傾け、「米国を憎んでいるか」「差別を受けたか」と質問した。その後、資料館を約1時間半掛けて見学した。新聞記者のバドーディーン・モハメド・ムルシディーンさん(42)は「阿部さんの『原爆を忘れることはないが、米国を憎んではいない』という言葉が心に残った。被爆者の思いを胸に、取材や平和活動に取り組みたい」と決意していた。
【写真説明】被爆体験を話し終えた阿部さん(左から5人目)と握手を交わすスリランカからの訪問団