厚生労働省は23日、5年ごとに行う公的年金の財政検証に基づく今後約100年間の将来試算を発表した。現役世代の収入に比べた厚生年金の給付水準(所得代替率)は、厚労省が基本とするケースで50・1%と、政府が2004年に約束した50%を維持できるとしたが、現行の62・3%に比べると2割目減りする。
経済が低迷し出生率が低い最悪ケースでは、所得代替率は43・1%まで低下。50%維持のケースも、積立金の運用利回りや賃金が大幅に高まることを前提にしており、「100年安心」の体裁を保つための楽観的な試算との批判も強まりそうだ。
所得代替率は夫が平均賃金で厚生年金に40年加入、妻が40年専業主婦というモデル夫婦世帯で計算する。基本ケースの年金月額は09年度の22万3000円から38年度は26万3000円(現在価値換算)と増えるが、所得代替率は04年想定時の50・2%からも微減した。
試算の前提として、厚労省は将来の経済指標と合計特殊出生率についてそれぞれ高位、中位、低位3通りの予測値を設定。両方を掛け合わせた9通りのケースで所得代替率を計算した。
経済、出生率とも中位の基本ケースの場合、年金財政を維持するための給付抑制措置が12年度から38年度まで続く。代替率は50%を維持するものの、04年に想定した抑制期間17年間が、現下の不況や積立金の運用損を受け、27年間に長期化。