雇用情勢が悪化する中、福岡県弁護士会は3月2日に生活保護版の「当番弁護士制度」を導入する。
日曜日も相談を受け付け、無料で市区町村への受給申請に同行したり、訴訟になった場合の代理人を務めたりする。同弁護士会によると、こうした取り組みは市民団体が行っている例はあるが、弁護士会単位では全国初という。
厚生労働省によると、生活保護受給者は約150万人(2006年度)。行政側は「できる限り応じるように指導している」(福岡市保健福祉局保護課)としているが、福岡県弁護士会生活保護問題対策委員会の平田広志委員長によると、受給審査は厳しくなっており、資格があるにもかかわらず門前払いされる人も少なくないという。
県内の30歳代男性の場合、いじめが原因でアルバイトをやめ、新たな職場では「派遣切り」された。所持金が十数円になり生活保護を申請したところ、福祉事務所の担当者から「アルバイトの時に自分からやめた」という理由で追い返された。ホームレスの60歳代男性は「住居がないから支給できない」と断られた。
いずれのケースも弁護士が役所に同行。「『働けるのにやめた』という理由で支給しないのは法の拡大解釈」「現在住んでいる場所が明らかなら支給すべきだ」と話し、受給が認められたという。
「当番弁護士制度」は、生活保護問題に詳しい弁護士77人を登録。県内4か所の法律相談センターで受け付け、弁護士に連絡する。相談や訴訟にかかる弁護士費用は、日本弁護士連合会が費用を肩代わりする「委託法律援助事業」を活用し、依頼者には負担を求めない。
ホームレスの自立支援に取り組むNPO法人・北九州ホームレス支援機構の奥田知志理事長は「困窮状態の人は精神面でも孤立し追い込まれることが多く、即座に法知識のある弁護士の助言を受けられるのは心強い。行政を動かす原動力になってほしい」と話す。
受け付けは天神弁護士センター(092・741・3208)など。年末年始と盆を除いて無休。平日は午前9時〜午後7時、土日祝日は午前9時〜午後1時。(川口知也)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090223-OYT1T00661.htm