旧ユーゴスラビア・セルビアから独立を宣言して1年を迎えたコソボで、11年前に大やけどを負った少女が日本で手術を重ね、着実に回復している。
ベシアーナ・ムスリウちゃん(12)は日本語を話したくてたまらない様子だった。「東京ディズニーランドが一番」「日本の海、すごくきれい」。だが、顔の皮膚移植の跡がつらい過去を思わせる。
コソボの多数派アルバニア系住民に対し、セルビア部隊が攻勢を強めた1998年春。中部スケンデライの自宅をセルビア部隊の砲撃が襲った。当時1歳9か月のベシアーナちゃんは頭と顔に大やけどを負ったが、地元医療機関は止血するのがやっとだった。
99年の停戦後、コソボ入りした民間支援団体「ADRA」の日本人スタッフの尽力で、東京で手術が2000年3月に始まった。渡航はこれまでに計5回。手術費など1500万円は募金でまかなった。
毛根が残る頭皮を引っ張って伸ばし、傷んだところに移植した。「とっても痛かった」とベシアーナちゃん。「でも、ほら」と、胸元まで伸びた髪をなでる。今夏の手術が最後となる見込みだ。「日本で医療の仕事がしたい」と笑った。(コソボ中部スケンデライで 金子亨 写真も)