麻生太郎首相が北方領土問題の決着による政権浮揚を狙い、「ロシアへの大幅な譲歩を考えているのでは」(日ロ外交筋)との憶測が広がっている。次期衆院選で政権交代を狙う民主党も「内閣支持率が低迷する中、領土交渉進展で一発逆転を狙うのか」(幹部)と警戒し始めた。
首相はメドベージェフ大統領と十八日に会談し、北方領土帰属問題の進展に向けた「型にはまらない独創的なアプローチ」で合意。記者団に「四島返還、二島返還と双方が主張して進展しなかった」と譲歩に前向きな姿勢を示した。
自民党幹部は「首相は四島の帰属問題解決という従来の基本的立場をあきらめ、歯舞、色丹、国後の三島返還や、択捉を含めた四島の面積等分返還を考えている」と分析する。
首相は外相当時の二〇〇六年九月、共同通信などのインタビューで「二島ではこっちが駄目、四島では向こうが駄目。間を取って三島返還というのは一つのアイデア」と発言。同年十二月には衆院外務委員会で、面積を考慮した分割案も検討する考えを示した。
今回の首相発言に関し、外務省幹部は「従来の発想にとらわれない例えとして発言しただけ」と説明している。首相も十九日の衆院予算委員会で「四島の帰属問題が一番肝心」と沈静化を図ったが、メドベージェフ氏との四月の再会談やプーチン首相との五月の会談を模索しており、成果を得たい考えだ。