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2009年02月22日(日) 02時06分

クリントン外交 米中対話の拡大をうたったが(2月22日付・読売社説)読売新聞

 オバマ米政権の対アジア外交の輪郭が浮かび上がってきた。

 ヒラリー・クリントン国務長官の外交デビューとなったアジア歴訪が今日で全日程を終える。

 今回のアジア歴訪の狙いについて、クリントン国務長官は、「米国は、欧州に強いパートナーを必要としているように、アジアにも強いパートナーを求めている」と強調してきた。

 日韓両国との同盟関係を強化、発展させるのは当然ながら、同盟関係にないインドネシアや中国とも関係を深める方針だ。

 インドネシアは、オバマ大統領が少年時代を過ごした縁もある。世界最大のイスラム教徒人口を抱える国への訪問は、イスラム諸国に関係改善のメッセージを送る狙いもあったのだろう。

 最後の訪問国の中国では、ブッシュ前政権下で始まった経済中心の米中戦略経済対話を、安全保障分野も取り込んだ、より包括的な戦略対話に「拡大」することで合意した。地球温暖化対策をめぐる協議も始めるという。

 オバマ大統領と胡錦濤国家主席との米中首脳会談も、4月のロンドン金融サミット開催の際に持たれることが確定した。

 喫緊の課題である経済危機の克服では、米国にとって、中国や日本の協力が不可欠だ。中国は、今や、日本を抜いて世界最大の米国債保有国である。

 米中両国による安全保障分野での戦略対話は、日本の安全保障にも重大な影響をもたらす。

 北朝鮮の核開発で、核拡散は現実になった。オバマ政権は核不拡散でリーダーシップをとるためにも、核保有国の核軍縮を率先したい意向だ。ロシアだけでなく、軍拡路線の中国も引き込まなければ意味はない。

 地球温暖化問題では、中国は二酸化炭素の排出量で、米国を上回って世界一となった。ポスト京都議定書の枠組みは米中抜きには成立しない。

 米中対話の前途は不透明だ。

 米国の景気対策法に盛り込まれたバイ・アメリカン条項で中国製品が締め出されることになれば、経済摩擦は避けられまい。

 クリントン長官は、「(人権問題によって)経済危機や気候変動、安全保障の議論が妨げられることはない」と述べた。

 だが、今年は天安門事件から20年、ダライ・ラマ亡命から50年になる。この節目をとらえ、民主化運動が高まる兆しがある。人権問題は、米中関係の火種である。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090222-OYT1T00032.htm