ローマで開かれたG7後に“ヘロヘロ会見”を行い、辞任した中川昭一前財務相(55)が、会見後に見学したバチカン博物館で、美術品の周囲に設けられた柵を乗り越えたり、美術品を手で触ったりしていたことが20日、ローマ法王庁(バチカン)関係者の話で分かった。このため、博物館では警報が作動。中川氏は会見で世界に醜態をさらした後も、シャレにならないマナー違反を犯していたことになる。
ヘロヘロ大臣は、禁断のタッチまで行っていた。中川氏は“深酒疑惑”が消えない記者会見を終えた後の14日午後、財務省幹部やバチカン博物館の職員らと約1時間半、同博物館を見学した。
フラフラした足取りで歩き回った中川氏は、よほど気に入ったのか、大蛇に襲われるギリシャ神話の登場人物をかたどった有名なラオコン像の前で柵を越えて素手で触ったという。さらに、触れてはいけない美術品にも1、2回触り、警報が作動したという。
中川氏はたびたび、自身のブログで「美術館好き」をアピールしてきた。2007年10月には「ハッとする絵を見てきました」との表題で、「芸術系は子どもの頃全く興味がなかった」が、数十年前、ロンドンのナショナル・ギャラリーで1枚の絵と出会って開眼。「Lady Janeという絵だが、ハッとした理由は省略。以来、美術館、美術展巡りが趣味になった」などとつづっている。
好きな作品については「若干マイナーかも知れないが、マグリット(ベルギー)とエドワード・ホッパー(アメリカ)。いずれも20世紀の、直線的で皮肉な画風。脳を刺激する」と説明。ラオコン像にも、脳を刺激されたのか…?
06年10月には「ルーブルやスミソニアンといった世界的に有名なところばかりでなく、カンボジアやインドネシアなどの民族博物館も、実に興味深い」と記している。
バチカン博物館では今回、いずれの場合も博物館職員が問題行為とはとらえず、制止しなかった。バチカン側も今後、中川氏に抗議などをする考えはないという。それでも日本の代表者として訪れた先での非常識な行動は、会見での失態に加え、恥の上塗りだ。
西洋美術に詳しい複数の専門家によれば、1506年に発見されたラオコン像は、これまで博物館の外に出たことはなく、値段が付けられないほど貴重なものという。京大名誉教授の乾由明氏は「バチカンでも特に大切にされている作品。柵を乗り越えて手で触れるなんて、国の代表以前に、人として非常識極まりない」とあきれた様子で話した。
中川氏の事務所は「体調が悪く、皆様にご迷惑をおかけすることになり、大変申し訳なく思っております」とコメントしている。
(2009年2月22日06時01分 スポーツ報知)
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090221-OHT1T00286.htm