香川県立中央病院(高松市)の受精卵取り違え事故で、人工妊娠中絶した20代女性に移植されたとみられる40代の患者の受精卵は、廃棄しようと作業台に放置されていたものだったことが21日、分かった。
この受精卵が入っていた培養容器(シャーレ)のふたは捨てたといい、香川県は、なぜ患者名が記されたふただけを捨て、容器をそのままにしていたのかを含め、再発防止に向け一連の経緯を詳しく調べる。
病院や産婦人科の川田清弥医師(61)によると、女性は昨年4月に産婦人科を受診。最初は人工授精、次に体外受精をしたが、いずれもうまく発育せず、川田医師は「妊娠は難しいかもしれない」と感じていた。
川田医師は9月18日、別の患者の受精卵が入った複数のシャーレを台上に出して作業。うち一つは不要と判断し、ふたを捨て、台の上に置いたままにしていた。次に女性の受精卵が入った複数のシャーレを出して作業するうちに混在し、すべてを女性のシャーレとして保管した。新たに女性の名前のシールを張ったふたを作ったかどうかは不明という。
川田医師は同日、本人の受精卵を女性に移植、さらに2日後の20日、別の患者とみられるシャーレの受精卵を移植した。
10月7日、検査で妊娠が判明。しかし、16日ごろ、「これまでの発育状態から考えると、順調過ぎるのではないか」との疑念がわき、自ら作業手順を検証した結果、ミスした疑いが極めて濃いことに気付いたという。
ふた、容器ともプラスチック製の使い捨て。病院の幹部は「不要になったシャーレのふたは日常的に捨てていた」と説明。川田医師は「捨てるものだから捨てた」と話しているが、ふたの廃棄がミスを誘発した可能性がありそうだ。
一般的に体外受精を実施する施設では、ミス防止のため容器を色分けしたり、ふたと本体両方に名前を書くなどの対策が取られている。
(2009年2月22日00時14分 スポーツ報知)
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090221-OHT1T00262.htm