東京23区予算案について担当記者の紙上座談会を20日に続き掲載する。ここ数年、予算案を分かりやすく説明しようと工夫を凝らす区が増えてきた。座談会の後編は、区長のPR力などをめぐり意見を交わした。
司会 各区長の会見で感じたことは?
松村 視覚的なPRを狙ってか、説明用パネルをもつ区長が増えた。港区なんかは、環境に力を入れていることをアピールするため武井雅昭区長は「港区」と記された間伐材製の縁台まで使っていた。
比護 新宿区も、ひな壇の後ろにパネルを用意し中山弘子区長が学校の先生みたいにパネルを棒で指しながら丁寧に説明していた。練馬区は志村豊志郎区長の説明がやたら長かったが、目玉事業をマスコミに必死に売り込もうとする姿勢は伝わってきた。
小川 杉並区の目玉はゲリラ豪雨などの大雨警報を電話で知らせるシステムの導入だが、山田宏区長が会見で電話を用意して、実演したり工夫もみられて良かった。山田区長は元衆院議員ということもあってパフォーマンス上手だ。
小林 区長が「政治家」的か「役人」的かによって広報もずいぶん違う。日ごろの取材でも感じていることだが、都議出身の山崎孝明江東区長は予算発表に限らず新事業などについて、記者を集めて自ら説明することが多い。逆にともに区職員出身の多田正見江戸川区長と、青木勇葛飾区長は淡々と説明していた。表面的なパフォーマンスは嫌いなようだ。
松村 ただ、同じ区職員出身の浜野健品川区長は予算会見について「以前と違って、近年は各区が独自事業を競い合うようになった」と感慨深く語っていた。二十三区は横並びになりがちなので、普段から競い合ってほしい。区によっては、普段の広報がお粗末すぎて、予算会見の豪華ぶりがばかげて見える。
小川 それと、区長がパフォーマンス上手でも、サポートする区の役人がついて行けずちぐはぐになるケースも多い。さっき触れた山田区長(杉並区)の場合でいえば、パネルも使って分かりやすく説明しようとしているのにパネルも文字も小さくて、こちらには読みにくい。行政が作るものは、一枚に詰め込もうとするので、こういう失敗をする。
司会 これはちょっと恥ずかしいなという区長はいなかった?
松村 麻生太郎首相の間違いであれだけ話題になっているのに、「未曾有」を「みぞうう(・・・・)」と言っているようにしか聞こえない区長もいた。それよりも、会見で質問しても、回答を職員に丸投げする区長もいた。本当に区長が分かって発表しているのか、疑問に思った。
越守 自分の担当する千代田、中央と文京は日本の中心部に位置するというのに、いずれの区長も配布資料を棒読みしていた。
中里 逆にいえば、自分の言葉で説明する区長は印象に残る。経済危機の中で積極予算を組んだ区では、区長が予算への思いを語る言葉に説得力があった。
松村 数字や細部は別として、区長たる者、予算への思いは自らの言葉で語ってほしいと今回の取材であらためて感じた。
【座談会出席者】稲熊均(司会)、松村裕子、比護正史、越守丈太郎、小川慎一、中里宏、小林由比
(東京新聞)