【プーケット(タイ南部)=実森出】東南アジア諸国連合・日中韓(ASEANプラス3)の財務相会議は22日、通貨危機に陥った国に外貨を融通し合う協定「チェンマイ・イニシアチブ」の資金枠を、現在の800億ドルから1200億ドル(約11兆円)に拡大することを決めた。各国の経済状態を監視する独自の常設機関を設けることでも合意し、これらを盛り込んだ行動計画を採択して終了した。
「チェンマイ・イニシアチブ」の機能拡充は、同様の支援プログラムを持つ国際通貨基金(IMF)とは独立した形で、機動的に資金を融通し合う体制を作る狙いがある。
アジアでは1997〜98年の通貨危機の際、欧米が主導するIMFの支援と引き換えに厳しい緊縮財政を迫られ、国民の不満が高まった記憶がある。このため、IMFの支援には「アレルギー」(関係筋)が依然として強い。
今回、IMFの監視機関とは別に、ASEANプラス3独自の監視機関を置き、各国の経済状況や財政・為替政策、金融監督体制を調査、監視することにしたのは、そのための大きな一歩となる。
現在は融通額の20%の範囲内であれば、IMFの承認なしに融通を受けられる取り決めとなっている。今回の行動計画では、新たな監視機関が十分に機能するようになれば、この割合を「20%以上に引き上げる」可能性を盛り込んだ。
常設機関の詳細を今後詰め、5月にインドネシア・バリ島で開催される次回会議で具体化を目指す。
このほか、行動計画では、「地域情勢は深刻な課題に直面している」との認識を示し、各国が実施している景気刺激策を歓迎した。また、「保護主義的な施策には反対するとの強い立場に立つ」とし、新たな貿易障壁の導入を控えることを強調した。
◆チェンマイ・イニシアチブ=東南アジア諸国連合・日中韓(ASEANプラス3)が、通貨危機防止のために結ぶ通貨交換協定。急激な外貨不足に陥った国に各国が外貨準備で保有するドルを供給し、当該国の通貨と交換する。1997〜98年のアジア通貨危機をきっかけに議論され、2000年のタイ・チェンマイでのASEANプラス3財務相会議で合意された。実際に発動された事例はまだない。
【ASEAN+3財務相会議行動計画の骨子】
▼地域経済の情勢は深刻な課題に直面。保護主義的な施策に反対。
▼通貨交換協定「チェンマイ・イニシアチブ」の拡充につき次回会合までの合意へ努力。
・外貨融通枠を800億ドルから1200億ドルに増額。
・経済情勢についての独立の地域監視機関を設立。
・IMFの支援なしに融通できる割合を将来的に現行の20%以上へ引き上げ。
▼アジア開発銀行(ADB)が地域の成長に必要な資本の供給に重要な役割を果たすと認識。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090222-OYT1T00714.htm