政府が3月上旬に国会に提出する予定の海賊対策の新たな法案「海賊行為への対処等に関する法案」(仮称)の概要が21日、明らかになった。
海賊行為を制止するための船体射撃を可能にする規定を設け、現行の自衛隊法の海上警備行動よりも武器使用権限を拡大するほか、自衛隊派遣に関しては国会報告を義務づけるとした。
海賊行為の定義は、国連海洋法条約を踏まえ、「私有の船舶や航空機の乗組員が私的目的のために行う不法な暴力、抑留、略奪」などとした。
その上で、〈1〉海上警備行動では日本関係の船舶に限られる保護対象をすべての船舶に拡大〈2〉海賊対処は海上保安庁と自衛隊が担い、海保では著しく困難な場合は自衛隊が対処〈3〉海賊行為の抑止は自衛隊、逮捕などの取り締まりは海保が担当〈4〉武器使用は警察官職務執行法7条を準用〈5〉相手に危害を与える射撃の要件に海賊行為制止のための船体射撃を追加〈6〉自衛艦派遣の実施計画は国会に報告——することなどを盛り込んだ。
罰則は、船を乗っ取り、人を死亡させた場合は死刑または無期懲役とする方向で調整中だ。
武器使用基準は危害射撃の要件を拡大したことが特徴だ。
武器使用が可能な場合を警職法7条に基づくとする点は海上警備行動と同じだが、同条は相手に危害を与えられる場合を正当防衛や緊急避難に限っている。海上警備行動の規定では、日本の領海ならば、海上保安庁法を準用し、正当防衛や緊急避難以外の危害射撃が可能だが、新法案が想定するアフリカ・ソマリア沖やマラッカ海峡近辺など領海外では適用されない。
このため、危害射撃の要件を追加した。具体的には、民間船に海賊船が接近した場合、正当防衛に当たらない段階でも、停船命令に応じず、他に手段がなければ、船体を射撃でき、海賊行為を抑止できる。
一方、自衛隊派遣に関する国会の関与を巡っては、議決を伴う国会承認を求める意見もあるが、海上警備行動でも国会報告が必要ない点を考慮した。
政府は3月上旬に海上警備行動を発令し、ソマリア沖に海上自衛隊の護衛艦2隻を派遣するが、新法成立後は活動根拠を新法に切り替え、活動を切れ目なく続ける方針だ。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090221-OYT1T01154.htm