沖縄の米軍基地負担の画期的な軽減策を現実のものとするため、今国会で協定を承認し、着実な前進を図りたい。
政府は来週、2014年までに在沖縄海兵隊の隊員8000人と家族9000人をグアムに移転するための日米協定の承認案を国会に提出する。3月中旬の審議開始を目指す。
海兵隊のグアム移転は、06年5月に日米両政府が合意した在日米軍再編の最終報告の重要な柱だ。実動部隊を沖縄に残すことで米軍の抑止力は維持される。一方で、多数の司令部要員らの移転により地元負担を大幅に減らせる。
協定は、中曽根外相とクリントン国務長官が署名した。オバマ政権との最初の日米合意である。
グアムでの隊舎など施設建設事業に対する日本側の財政支出を最大28億ドルとし、その使途を海兵隊移転関連に限定すると明記した。米国企業だけでなく、日本企業なども事業に公平、公正に参加できるとする条項も盛り込んだ。
複数年に及ぶ大型公共事業は、当初見積もりより費用がかさむ例が多い。国会承認を伴う重い国際協定で、支出の上限と使途に歯止めをかける意味は小さくない。
海兵隊のグアム移転が、普天間飛行場の沖縄県内移設などと一体の計画であることも改めて確認された。そうである以上、普天間移設を日米合意通りに進めるのが負担軽減を実現する近道である。
沖縄県は、普天間飛行場の代替施設の沖合移動に固執せず、普天間など6米軍施設の返還後の跡地利用などについて政府と前向きに協議する方が得策ではないか。
山口県岩国市は、米軍厚木基地の空母艦載機の岩国移駐を受け入れた結果、12年度に岩国基地を軍民共用化し、民間機を就航させることになった。政府と自治体が共同歩調を取れば、基地問題をより建設的な方向に進められる。
協定承認案の国会審議では、民主党の賛否の対応が問われる。
民主党は「経費の積算根拠などの説明責任が果たされていない」と海兵隊のグアム移転を批判する。だが、その理由だけで、普天間飛行場の県内移設と同様、グアム移転に反対するのだろうか。
仮にグアム移転や普天間移設を見直す場合、膨大な時間と費用が無駄になる。米国は再交渉に強い不信感を持つうえ、今より良い条件で合意できる保証はない。
民主党が次期衆院選後に政権を担う覚悟があるなら、野党だから政府案には何でも反対するという姿勢に陥るべきではあるまい。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090220-OYT1T01172.htm