精神科専門の国立病院機構肥前精神医療センター(吉野ヶ里町)は27日、国立病院機構福岡病院(福岡市南区)に週1回の出張所「アルコール専門外来」を開設する。精神科の専門病院に足を踏み入れにくい患者を掘り起こすのが目的。アルコール依存症の治療に特化した外来を一般病院に設けるのは全国でも珍しいといい、センターは「飲酒運転撲滅の一助にもしたい」と意気込んでいる。(本部洋介)
毎週金曜日の午後2〜4時、センターの医師が症状を聞き取るほか、センター内で行う治療の様子をビデオで紹介したりする。完全予約制で、1、2回の診察後、入院や通院の必要があると判断すれば、センターで治療を始める。
センターによると、2003年の推計値で、国内にはアルコール依存症の患者が約80万人いるが、精神科の専門病院で治療を受けているのは3万〜5万人にとどまっている。肝臓病などとして専門病院以外で治療を受ける人が多く、依存症の治療が進まない一因になっている。飲酒運転で免許取り消し処分を受けた人の4割が依存症の疑いがあるとの調査結果もあるという。
センターは、「精神科の専門病院は病室に鉄格子があって怖い」などと誤解していることが背景にあると分析。人口の割に専門病院が少ない福岡県での設置を目指してきた。杠(ゆずりは)岳文・センター副院長(アルコール治療)は「専門病院に来る段階で、すでに仕事や家庭を失い、重篤になっている患者が多い。早期に治療できる態勢を整えたい」と話している。
センターは1945年、軍事保護院傷痍(しょうい)軍人肥前療養所として開設され、83年にアルコール依存症の専門外来を始めた。飲酒の悩みを抱える人が年間200〜300人、新規で受診している。依存症から立ち直った人を交えてミーティングを開いたり、患者に目標を設定させ日記をつけながら酒量を減らす治療をしたりしている。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saga/news/20090221-OYT8T00074.htm