共同通信社は21日、外部識者による第三者機関「報道と読者」委員会の第38回会議を東京都港区の本社で開催し、3人の委員が「雇用問題」と加盟社合同企画「環境異変」をテーマに議論した。
雇用問題では、ジャーナリストの五十嵐公利氏が、製造業務への労働者派遣解禁が厳しい雇用情勢を改善するなどとした2003年ごろの報道について「記者クラブで書くと役所寄りになりがち」と批判。当時の担当閣僚の政治責任などの検証が必要と指摘した。
立命館大教授の佐和隆光氏は「戦後初めてメディアが雇用を真正面から取り上げざるを得なくなった」と述べた。安定雇用創出の観点から政府の景気対策は見直しが必要で、メディアも提案すべきだとした。
弁護士の林陽子氏は、派遣社員らの削減を進める大手製造業の内部留保が空前の規模に膨らんだとの記事について「大きな意味がある。(今後も)掘り下げられる問題」と指摘。東京・日比谷の「年越し派遣村」報道は、時代を象徴する出来事として積極的にとらえる視点と、メディア効果を狙ったパフォーマンスという批判的な視点の両方が必要とした。
加盟社合同企画「環境異変」は、佐和氏が「環境異変をこれだけ取材したのは大変貴重だ」と評価。林氏も「おもしろく読んだ。何をどうしたらいいか考えさせられた」と話した。