大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫・元北朝鮮工作員の日本語教育係だったとされる拉致被害者田口八重子さんの長男飯塚耕一郎さん(32)が共同通信のインタビューに応じ、現在日本と韓国で調整が進められている金元工作員との面会について「母の面影を心に焼き付けたい」と語った。
田口さんが拉致されたのは耕一郎さんが1歳の時。田口さんの兄飯塚繁雄さん(70)の手で育てられた耕一郎さんには、母親の記憶がない。
飯塚さんから、田口さんの長男であると聞かされたのは21歳の時だった。「育ての親が実の親ではなく、実の母は北朝鮮にいる。同時に2つの事実を知らされショックだった」。爆破事件に田口さんがどう関与したかも分からず「自分は犯罪者の息子なのか」と悩んだという。
北朝鮮は2002年9月、日本人拉致への関与を認め、田口さんが1986年に事故死したと発表。育ての母は電話で「ごめんね」と言いながら泣いた。「何も悪くないのに謝るなんて」。悔しさが込み上げ、公園のベンチで涙を流した。
「北朝鮮の発表はでたらめ。母を救出したい」との思いから04年、名前を公表。都内のIT企業技術者として多忙に暮らすかたわら、週末に講演活動を続ける。