【ナイロビ20日共同=田中寛】国連環境計画(UNEP)の第二十五回管理理事会は最終日の二十日、世界的に深刻化している水銀汚染防止のため、水銀の排出を国際協力で削減する条約の制定を二〇一三年までに目指すことを決めた。一〇年に政府間交渉委員会を設置する。
水銀の排出削減を義務づける法的拘束力のある条約の制定をめぐっては、各国間で賛否が分かれ激しく対立していた。だが、交渉開始が決定し各国の意見が大筋でまとまったことで、国際的な水銀汚染対策に向けて大きく前進した。
具体的な内容は今後の交渉次第だが、厳しい輸出規制などが決まれば、日本の産業にも影響が出そうだ。
UNEPのアヒム・シュタイナー事務局長は記者会見で「人類の未来に大きな影響を与える決定だ」と高く評価した。
決定によると、〇九年後半に作業部会を開いて一〇年からの交渉委員会に向けた準備を開始、一三年のUNEPの管理理事会までの条約制定を目指す。水銀の生産規制や禁止、排出削減対策や輸出規制などが新条約の焦点となる。
理事会はまた、企業や非政府組織(NGO)などでつくる自主的な取り組み「グローバル水銀パートナーシップ」の下で、水銀の排出量削減などの対策を加速させることでも合意した。
米国のブッシュ前政権は条約制定に強く反対し、各国の自主的な取り組みで対応できると主張。環境保護団体などは「米国が条約制定の障害となっている」と批判していたが、オバマ新政権の代表は十六日の非公式会合で、一転して条約制定を主張。条約制定に賛成の欧米諸国や日本に対し、中国やインドが反対の立場だったが、最終的に軟化し、交渉開始に同意したという。