公益事業では認められない多額の利益を上げていた財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市下京区、大久保昇理事長)が今年度、日本貿易振興機構(ジェトロ)の赤字事業「ビジネス日本語能力テスト(BJT)」を3億3600万円で買い取っていたことがわかった。
ほかにも、全国にある様々な資格や検定の信頼性を評価する組織を設立するなど事業を拡大し、今年度だけで計約6億円を支出している。文部科学省から指導された“黒字減らし”が目的だが、一方で、検定料の引き下げには応じておらず、同省は「抜本的な解決にならない」として、あくまで引き下げを求めている。
協会は公益事業で2006年度約9億円、07年度約7億円の利益があり、同省が06年と08年に検定料の引き下げを指導。協会は07年度に一部を引き下げたが、同省は不十分としている。
BJTは、ジェトロが日本語を習う外国人向けに1996年から実施。05〜08年度は各5000〜9000人が受検したが、毎年度2000万〜8000万円の赤字が生じ、4年間の赤字額は計約2億円に上る。総務省政策評価・独立行政法人評価委員会が06年、民間移管をジェトロに勧告。08年2月に入札が行われ、同協会が落札した。
ジェトロの関係者は「高額で売却でき、ほっとした」と振り返る。協会は今年度約3億円を分納しており、09年度から協会が検定事業を行うという。
さらに、協会は08年12月、各地で増えている資格や検定の内容、信頼性を第三者の立場で評価することを目的とした一般財団法人「資格標準化機構」(東京都千代田区)を設立。基本財産と運営資産に2億円を拠出し、大久保理事長が代表理事に就任した。理事には、著名な学者らが名を連ねている。
このほか、協会は07年度に始めた東大大学院教育学研究科との共同研究に、08年度は1800万円を寄付。07年度からの京大経済研究所との共同研究に08年度、3000万円を寄付する。
協会は検定料の引き下げについて、「収支バランスの均衡が崩れ、円滑な経営を阻害する」として、文科省には「公益事業の拡大で利益を減らす」と説明。これに対して、同省は「一時的な支出に過ぎず、抜本的な対策としては検定料の引き下げが必要」との姿勢を崩していない。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090221-OYT1T00646.htm