旧日本郵政公社の売却施設の約7割がすでに転売されていた問題で、首をかしげるような売却の実態が次々と浮かび上がってきた。
買い手がつかないとして、地元の自治体に随意契約で譲渡されながら結局は転売されたり、希望しても個人では購入できない一括売却対象の物件を、購入した企業の転売後に取得することになったり……。本来、国民の財産でもある旧郵政施設の売却が、その場しのぎに行われた印象が色濃くなっている。
島根県大田市が2007年3月、随意契約により約7350万円で購入した「かんぽの宿・三瓶(さんべ)」は、翌4月に同額で岡山県内の旅館業者に転売された。同市の石見銀山は同年7月から世界文化遺産に登録されることになっていたため、同市は大規模な宿泊施設が必要と考え、転売を前提に購入した。
同市が売却を公表すると、直後に数社が運営に名乗りを上げた。同市担当者は「客の増加が確実なのに(旧郵政が)手放すという不思議な話だった。一般競争入札を行っていたら、高値で買い手がついたはず」と、首をかしげる。
岡山県浅口市も07年4月、「かんぽの宿・遙照山(ようしょうざん)」を随意契約で8500万円で購入した。前年8月、地元自治体に売却が打診され、同市は宿泊施設を残すために手を挙げた。相手から売却額の提示は一切なく、同市が提案した“言い値”で取引されたという。施設は8日後、同額で都内の建設会社に転売され、現在、ホテルとして運営されている。
一方、茨城県内の60歳代の無職男性は06年ごろ、自宅の隣にある郵政社宅跡地(約240平方メートル)が売りに出ていると知ったが、企業向けの一括売却の対象だったため、一度は購入を断念した。ところが1年後、全国で郵政施設を落札した企業が別の不動産会社に転売後、購入を持ちかけられ、210万円で購入した。
郵政施設の中には、個人に直接売却した物件も複数あり、男性は「この違いはなぜなのか。きちんと説明してほしい」と話した。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090220-OYT1T01242.htm