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2009年02月20日(金) 11時57分

交通死亡事故で猶予判決、「実刑」望む遺族の意見を入れず読売新聞

 東京都内の交差点で昨年8月、オートバイの男性(当時34歳)をトラックではねて死亡させたとして、自動車運転過失致死罪に問われた運転手・海野尚康被告(66)の判決が20日、東京地裁であり、小池勝雅裁判長は禁固1年6月、執行猶予5年(求刑・禁固1年6月)の有罪判決を言い渡した。

 この裁判は、犯罪被害者や遺族が被告に質問などができる「被害者参加制度」が適用され、全国で最初に公判が開かれた。男性の妻(34)は求刑の意見として実刑判決を求めており、判決の瞬間、涙を流した。

 判決は、「被告には事故を真摯(しんし)に反省しているか疑問だと指摘されてもやむを得ない面が多々みられ、遺族が深く傷つき、憤りを募らせるのももっともだ」と述べたうえで、無謀運転による事故ではなく、被告が非を認めていることなどから、「実刑は重すぎる」と判断した。

 小池裁判長は判決後、検察官側の席に座った被害者の妻と兄(35)に対して、「落胆されているかもしれないが、無謀運転の場合と一線を画すことはやむを得ない」と述べた。被告に対しては、「あなたなりに被害者を弔う方法を考えてほしい」と説諭した。

 最高検によると、昨年12月に導入された被害者参加制度に基づく参加の申し出は1月末までに64件で、自動車運転過失致死傷が37件と半数を超える。最高裁によると、2008年に自動車運転過失致死罪で有罪判決(1審)を受けた1426人中、実刑は約13%の182人にとどまっている。

 妻と兄は閉廷後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した。妻は求刑の意見を述べたことについて、「やって良かったが、質問で明らかになったことが判決に反映されず、残念だ」と再び涙ぐんだ。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090220-OYT1T00498.htm