旧日本郵政公社が不動産会社などに売却した郵政関連施設が、次々に転売されていた実態が、読売新聞の全国調査で浮かび上がった。
売却時の評価額の14倍もの高値で転売されたケースもあれば、購入からわずか3か月で、9000万円上乗せして売られた物件も。さらに地方の社宅など7施設の評価額は、わずか1000円だった。これらは、旧郵政省の所有地や郵便局の簡易保険で集めた資金などで購入されたもので、専門家は「旧郵政公社は、国民の財産に対する認識が欠けていたのではないか」と指摘している。
旧公社の社宅だった長野市内の土地(約900平方メートル)は2005年3月、旧公社が保有する他の不動産物件と一括して、不動産投資を目的とする「CAM6」(東京都港区)に売却された。日本郵政によると、この土地の評価額は約290万円だった。ところが、1年後の06年3月、地元の鉄道会社に転売された時には、売却額は約4080万円と約14倍に。CAM6を設立したのは都内の投資会社で、同社関係者は「個別の取引内容については、お話しできない」としている。
一方、マンション販売会社「コスモスイニシア」(千代田区)は07年3月、堺市にあった旧公社の社宅(約3360平方メートル)を、同じように他の物件とともに一括購入した。同社はこの社宅を2億4000万円と評価して購入したが、3か月後の同年6月、地元の不動産会社に転売した価格は約9000万円を上乗せした約3億3000万円だった。コスモスイニシアも「個別の話については答えられない」としている。
06年3月に一括売却された千葉県東金市内の社宅(約187平方メートル、日本郵政の評価額約407万円)は2年間に4回も転売された。転売にかかわった都内の不動産業者は「物件は転売目的で購入した」と読売新聞の取材に答えた。
旧公社の一括売却は、優良資産や資産価値が乏しい物件をまとめて売却する「バルクセール」と呼ばれる手法。6000万円で転売されたことが判明した鳥取県岩美町の「かんぽの宿・鳥取岩井」は、評価額がわずか1万円とされ、評価額がわずか1000円の物件も、北海道夕張市の社宅や山形県鶴岡市の社宅など7件あった。
物件によっては、個別に値段を付ければ、高値で売れた可能性もあるが、日本郵政は「売れ残りをなくすために一括売却の手法を使った。全体の売却価格は、当社の鑑定評価額の合計額以上になっているので問題はない」と説明している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090220-OYT1T00298.htm